社内報新年特別号

毎月でる社内報も、新年号だけは特別号で小冊子になります。そこに毎年一年を振り返って十大ニュースを書いています。今年も書いたのでこちらにもご紹介します。   鬼頭

 

***************************

 

 皆さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 2011年も十大ニュースを振り返ってみたいのですが、あまりにも大きな出来事があったので、それを冒頭に書かざるをえません。一番目は言うまでもなく3.11の東日本大震災とそれに伴う福島第一原発の事故のことですね。あの瞬間、日本は大きく歴史上のターニングポイントをぐるりと回ったのです。


 ところが、どこかの国の政治家と官僚と大企業だけはターニングポイントを回っていないというのはどういうことでしょうか。それを十大ニュースの二番目に挙げておきます。復興の歩みは遅々として進みません。仮置き場の瓦礫の始末すらほとんど進みません。それにもかかわらず、政治家は政局に汲々とし、官僚は既得権益にしがみつき、電力会社はヤラセメールですし、一流企業の飛ばしも露呈しました。


 三番目はギリシャ危機に端を発したユーロ圏の財政危機でしょうか。PIGSとはポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字ですが、財政危機はそれだけにとどまるものではなく、メルケル首相の眉間の皺は増えるばかりです。


 四番目。ヨーロッパばかりでなく、国債の格付けが下がり、長期のイラク戦争による財政負担、赤字続きの国際収支など、アメリカの財政危機もまた深刻化するばかりです。アメリカ経済の混迷と焦りがTPP交渉に見え隠れします。


 五番目にはいわゆる政治の混迷を挙げておきます。菅政権が倒れ、野田政権が誕生しましたが、こればかりは毎年の恒例行事のようで、いまさら十大ニュースに挙げる気にもなりません。しかし、野田政権になって、一気に消費税値上げの機運が高まったことは無視するわけに行きません。


 ということで六番目に、超円高による日本経済の混迷を挙げておきましょう。円高が日本経済を蝕みます。失われた20年と言われますが、その間自民党政権も民主党政権も、何ら有効な政策を打ち出すことは出来ませんでした。税と社会保障の一体改革は必要です。けれど、その前に政治家と官僚は身を切るべきだと国民の多くは思っているはずです。ところが、当の本人たちは一向に変わろうとしません。君たちも日本の歴史のターニングポイントを回りなさいと言いたくなるのは私だけでしょうか。


 七番目。一方、アフリカ諸国で始まったいわゆる「アラブの春」はエジプトなどで混迷の度合いは深まりつつあるものの、注目すべき新しい波を感じます。チュニジアのジャスミン革命から始まり、エジプト、リビア、サウジアラビアなどに大きな民主化運動の波が広がりました。それは中国や、最近ではロシアにも波及し、プーチンさんの顔は渋くなるばかりです。こうした民主化の流れに大きく関与したのが、ITによる情報の共有化であったことが何よりも注目すべきことでした。そのITですが…


 八番目に、スティーブ・ジョブズの死去を挙げます。彼は単に「アップル」という一企業のカリスマだっただけではなく、世界のITのあり方を変えたカリスマでした。不幸な生い立ちと自分で作ったアップル社を追われるという数奇な経歴が、より彼の人生を劇的にします。けれど、彼が死んだことの本当の意味は、彼がきっと更に大きなものを生み出したに違いない未来の成果を突然に失ってしまったことにあります。それ程に彼がなした業績は未来的で、世界を大きく変えました。


 九番目に私事ながら、父の死去を挙げさせてください。父はあーる工房の設立当初から会社役員として参加してくれましたが、なによりも多くの人達からパパさん、パパさんと愛されました。不器用で身勝手なところもありましたが、仕事を楽しみ尽くすという大切なものを教えてくれた人でした。


 さて、2011年の十大ニュースの十番目に、すこしありきたりな、あるいは臭いことを書かせてください。清水寺恒例の今年の漢字は「絆」でしたね。私はこの漢字が選ばれたことを素直に受け止めたいと思うのです。


 ヨーロッパとアメリカを襲う財政危機は、日本にとってひとごとではありません。財政赤字に円高が追い打ちをかけます。復興増税が重くのしかかり、消費税増税もいよいよ現実味を帯びてきました。中国経済の好調さに寄生してきた各国経済ですが、中国では鉄道事故に露呈した体制の欠陥、そして不動産バブル崩壊の危機。中国に頼り切れない先進各国はもがき苦しみ、自己防衛とブロック経済の傾向を強めるでしょう。


 そんな最悪の時代に大切なのは、結局は人と人とが助けあい励まし合うことではないでしょうか。国と国との関係も、復興も、会社と従業員も、店長とスタッフも、お店とお客様も、それぞれの違いを認め合い、尊重し、より良いものに向かって少しずつでも向上心をもって歩んでいくしかありません。今年の漢字はそんな私たちに大きな勇気を与えてくれるものではなかったでしょうか。だからこそ「絆」を素直に認めたいのです。