あーる工房社内報冒頭文

あーる工房では毎月一回社内報(壁新聞のようなもの)を出しています。今月号は147号になります。その号の全てに冒頭文を書いてきました。もう12年ほど書き続けたことになりますね。光陰矢の如し。その冒頭文を旧ホームページで公開してきましたが、今月号からこのブログに公開させてください。時には社内にしか通用しないようなことも書きますが、できるだけそのまま公開していきます。宗吉

 

2011年10月号 社内報冒頭文

 

 皆さんお元気ですか。秋も深まり、朝晩は寒いほどですね。風邪などひかないように注意してくださいね。

 さて、今日はおすそ分けの話をしましょうか。きのうの我が家の献立は、今年の秋初めての栗おこわでした。おかずのさんまと合わせて、秋の味覚をたっぷり満喫しました。

その栗ですが、つい先日高校時代の同窓生から電話がかかり、「おい、今日は羽島にいるか」「うん、いるよ」「じゃあ栗が沢山拾えたから持って行ってやるよ」。そして車を飛ばして持ってきてくれました。それがまたすごい量で、とてもうちだけでは食べ切れないくらい。旧友のあたたかいおすそ分けでした。

ところが、話は続きます。その日の午後、宅急便が届き、ちづさんの田舎から段ボール箱が届きました。なんだろうと開けてみると、これが全部栗!重なるときは重なるもので、まさに嬉しい悲鳴でした。早速ちづさんが身近の人に配ったり、友達に電話をしたりして、おすそ分けをしました。

そんなことで、私もおすそ分けをしたくなりました。

関東では月に二回店長会議をしています。その席で毎回一人、店長さんが順番に前へ出て、15分程度の話をします。人前で話すこと、話の内容を組み立てることの訓練が目的です。毎回ひとそれぞれでとても面白いのですが、その中から何人かの話のおすそ分け。

ある店長は「追加加工をおすすめすることは大切です。」と言います。それで、かかとのお客様にソールをおすすめするとか、インソール交換をおすすめするとか、バッグの修理のお客様に角の色塗りをおすすめするとか、そんな話かなと思ったらそうではないのです。「今日は鍵の追加加工についてお話しします」

一瞬何のことかわからなかったですね。鍵の追加加工ってなんだろう。

「お客様が元鍵を持ってきて、合鍵を一本注文されます。その時に、お客様、この鍵は元々から付いていた親の鍵です。この鍵はとても大切で、これを使うとだんだん減って行ったり、折れてしまったりすると大変です。ですから、せっかくなら合鍵をもう一本お作りになり、この小屋の鍵は大切に保管されるといいですよ、とお勧めします。何人かに一人は必ず二本作ってくれますよ」 なるほど。今まで気が付かなかった盲点でした。

 もう一人の店長は、残業をしない方法と題して話してくれました。「残業をしないようにするにはどうしたらいいか、ずっと考えていました。それでここ数ヶ月実験を始めました。

残業せずにその日は帰り、次の日早出をするのです。そうすると、いろいろなことが分かって来ました。まず、一日仕事をしたあとで残業すると、疲れているので能率が悪くなります。けれど早く帰って早く寝ると、体が楽なので朝の作業がはかどります。ですから、今は午前中に重い仕事が能率良くできるようになりました。その結果全体として残業時間が圧縮できました。それと、夜一人で残業していても誰も評価してくれません。けれど朝早く来て仕事をしていると、九時半頃からスタッフがぼつぼつ集まってきて、みんなにおはようと声をかけることができます。おかげてスタッフとの関係もうまくいくようになったと感じます」 なるほど!みんな考えているんだね。

 最後に、ある店長が言った一言がとても印象に残っています。その店長は物語について語りました。ちょっとした個人的な思いのあとに、「接客もお客様と創る物語じゃないでしょうか」と彼は言います。毎回毎回お客様は変わります。その都度新しい物語をそのお客様と創っていきます。上手くいかない所があると、その次にまたその部分に気をつけて、新しい物語を作ります。

 接客をおもてなしだとよく言いますが、ともすると上から目線になりがちです。お客様と共に作る物語というのは新鮮な目線で印象的でした。

 仕事が面白く、やりがいや生きがいを与えてくれ、人生に充足感を与えてくれるものだとしたら、お客様にもその喜びをおすそ分けしてあげたい、私はそう思うのです。